伝統的なことばの文化を「春はあけぼの」で学ぶ

子どもたちも大好きな章段

『枕草子』で一番有名な、「春はあけぼの」から始まる段。文語の細かな意味は分からなくても、独特のリズムや美しい語調も手伝って、子どもたちも抵抗なく暗唱などの学習に取り組めると思います。伝統的なことばの文化を学ぶにあたり、『枕草子』のこの章段は、暗唱だけでなく、季節を題材に自分の考えを述べたり、意見を交換したりするなどの活動にもぴったりです。

作品をより深く味わう!オリジナル「春はあけぼの」発表会はいかが

音読・暗唱活動では、読む調子や間の取り方、場面の様子を思い浮かべながら読み方を工夫して発表させることがよく行われます。特に『枕草子』では「をかし」(おもむきがある)という言葉について丁寧に押さえると学習活動に一層の深みが出てきます。この「をかし」について考えさせながら,作品をより深く味わえるように、オリジナル「春はあけぼの」を作って発表しあう活動はいかがでしょうか。


グループを作り、担当する季節を決め、それぞれについて「をかし」と感じるものをあげて発表させます。自分たちでつくった「春はあけぼの」の段を通じて、みんなが感じるその季節らしさや、清少納言の季節感とくらべてみると学習がもっと深まります。春・夏・秋・冬のすべての「をかし」を見つけるのはなかなか大変ですが、一つの段を完成させると、子どもたちも達成感が味わえるでしょう。

オリジナル「春はあけぼの」のやり方

1「をかし」と感じるものを考える
 四人ぐらいのグループをつくり、それぞれの季節について「をかし」と感じるものを書き出してみましょう。
<例>春
・入学式
・木々の芽

2「をかし」の理由を考える
1であげたものについて、「をかし」と感じる理由を考えてみましょう。
<例>
・うれしさや緊張感
・春の訪れやたくましい命

3 オリジナル「春はあけぼの」を書く
1と2をつなげて、オリジナル「春はあけぼの」の段をつくります。まず、「をかし」と感じるものを書いて、そのあとにその理由を書きます。今のことばで書いてもかまいません。もちろん古文に挑戦するのもいいでしょう。

4 発表する
グループごとに発表します。模造紙などに書いて、みんなに見せながら発表しましょう。

発表例<原文>

春は入学式。やうやう強くなりゆくうれしさ、すこし緊張して、芽ぶき始めた木々の命みなぎりたる。

夏は花火。花火大会はさらなり、手持ち花火もなほ 、きれいな色が飛びちがひたる。また、ただ一人二人など、静かに線香花火もをかし。消えたあとの火薬のにおいもをかし。

秋は運動会。青空すんで、自分の番いと近うなりたるに、みんなのトロフィーをとるとて、三位四位、二位三位など、走り去るさへ あはれなり。まいて、友などの走りたるが、いと真剣に見ゆるはいとをかし。勝負決まりて、喜びの声、くやしがる声など、はたいふべきにあらず。

冬は正月。雪の降りたるはいふべきにもあらず、息のいと白きも、またさらでもいと寒きに、こたつなど急ぎつけて、部屋に集まるもいとつきづきし。三月になりて、ぬるくゆるびもていけば、こたつの出番も少なめになりてわろし。

発表例<現代語訳>

春は入学式(がよい)。だんだん強くなっていくうれしさが少し緊張に変わって、めぶき始めた木々が命みなぎっている(のがよい)。

夏は花火(がよい)。花火大会はいうまでもないが、手持ち花火もやはり、きれいな色が飛びかっている(のはよい)。また、ほんの一人、二人が、静かに線香花火をしているのもおもむきがある。消えたあとの火薬のにおいも風情があってよい。

秋は運動会(がよい)。青空がすんで、自分の番にぐっと近づいたころに、みんながトロフィーをとろうとして、三、四位、二、三位などと走り去っていく姿までしみじみとした感じがする。まして、友達などが走っているのが、たいへん真剣に見えるのは非常におもむきがある。勝負が決まってしまって、喜んでいる声、くやしがっている声など(が聞こえるのも)、また言いようもない(ぐらいよい)。

冬は正月(がよい)。雪が降っているのは言うまでもなくよいが、息がたいへん白いのも、またそうでなくても、とても寒い正月にこたつなどを急いでつけて、部屋にみんなが集まるのも実に(冬に)ふさわしい。三月になって、寒さがだんだんとゆるんでいくと、こたつの出番が少なくなって、あまりよくない。

冬は正月。